親の介護と看護師の仕事を両立する|使える制度と働き方の選び方

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親の介護と看護師の仕事を両立する|制度と働き方の選び方

親の介護は、ある日突然始まります。

倒れた、骨折した、認知症の症状が出てきた——きっかけはさまざまですが、共通しているのは準備する時間がないことです。そして看護師の場合、もうひとつ特有の問題があります。

「あなたは看護師なんだから」と、家族から期待されるということです。

この記事では、使える制度、働き方の選択肢、そして看護師が陥りやすい罠について整理します。

監修: 現役医師(放射線治療科・大学病院勤務)
医療・介護の連携に関わる立場から、制度と現場の実際を整理しています。


まず知っておきたい制度

「両立できないから辞める」という判断をする前に、使える制度を確認してください。知らないまま辞めてしまう人が非常に多いのが実情です。

介護休業

項目内容
期間対象家族1人につき、通算93日
分割3回まで分割して取得できる
対象家族配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
給付介護休業給付金(雇用保険。賃金の一定割合が支給される)

ここで大事なのは、93日は「自分で介護する期間」ではないということです。

93日で介護が終わることはありません。この期間は、介護の体制を組み立てるための時間として使うのが本来の設計です。要介護認定を受け、ケアマネジャーを見つけ、サービスを手配し、家族で役割分担を決める。そのための時間です。

「3回に分割できる」という点も重要です。状態が変わるタイミング(入院、退院、施設入所)ごとに使うという考え方ができます。

介護休暇

項目内容
日数対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日
単位1日単位・時間単位で取得可能
用途通院の付き添い、手続き、ケアマネとの面談など

短時間の用事に使えるのがこの制度です。有給休暇を消費せずに済みます。

勤務時間の調整に関する措置

事業主には、介護をする労働者のために、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成のいずれかの措置を講じる義務があります。

さらに、所定外労働(残業)の免除や、深夜業の制限を請求することもできます。

看護師にとって、この「深夜業の制限」は特に重要です。 夜勤が両立の最大の障害になるためです。制度として請求できることを知っておいてください。

2025年からの変更

育児・介護休業法の改正により、事業主が介護に直面した労働者に対して、制度を個別に周知し、利用の意向を確認することが義務化されています。

つまり、職場から説明があるのが当たり前になりました。説明がない場合は、こちらから人事や総務に確認して構いません。

⚠️ 制度の詳細や適用条件は改正されることがあります。必ず勤務先の担当部署と、お住まいの自治体・ハローワークで最新の内容をご確認ください。


看護師が陥りやすい3つの罠

ここからが本題です。医療者だからこそ起きやすい問題があります。

罠1:「専門職だから自分でやれる」と抱え込む

看護師は、介護の技術を持っています。移乗も、清拭も、吸引も、服薬管理もできる。

だからこそ、「自分がやったほうが早い」「他人に任せるより安心」と考えてしまいます。そして家族も「あなたがいるから大丈夫」と言います。

しかし、仕事で介護をするのと、実の親を介護するのはまったく別の営みです。

  • 24時間、切り替えるタイミングがない
  • 感情が入るため、冷静な判断が難しくなる
  • 「できるはず」という自己期待が休むことを妨げる
  • 勤務先でも介護をし、家でも介護をする

技術があることは、必ずしも有利に働きません。むしろ「できてしまう」ことが、外部サービスの導入を遅らせる原因になります。

できることと、やるべきことは違います。 ここは意識的に切り分けてください。

罠2:ケアマネジャーに丸投げしない、が行きすぎる

医療知識があるため、ケアプランに対して意見が出せます。それ自体は良いことです。

しかし、すべてを自分で判断しようとすると、ケアマネジャーとの関係がうまくいかなくなることがあります。

介護保険の制度、地域の事業所の実情、家族支援のノウハウは、ケアマネジャーの専門領域です。医療の知識と、介護保険の実務知識は別物だと考えて、任せるべきところは任せてください。

罠3:職場に言わない

「迷惑をかけたくない」「シフトに穴を開けたくない」と考えて、介護の状況を職場に伝えない人がいます。

しかし、伝えなければ制度は使えません。そして限界まで黙っていると、ある日突然辞めることになります。職場にとっても、そのほうが困ります。

早めに伝えておくと、

  • シフトの配慮が受けられる
  • 制度の説明が受けられる
  • 突発的な休みへの理解が得られる

「介護があるので、今後シフトの相談をさせてください」の一言から始めれば十分です。


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働き方の選択肢

制度を使っても両立が難しい場合、働き方そのものを変える選択肢があります。

① 今の職場で夜勤を外す

まず検討すべき選択肢です。転職より負担が小さいからです。

深夜業の制限を請求できることは前述のとおりです。日勤常勤に切り替えられないか、まず職場に相談してください。

収入は下がりますが、転職に伴うリスク(人間関係のやり直し、業務の習得)を回避できるのは大きな利点です。

② 日勤中心の職場へ転職する

夜勤を外せない、あるいは今の職場では調整が難しい場合の選択肢です。

職場特徴
クリニック(外来)日勤中心。半日勤務も可能な場合がある
健診センター土日休みが多く、予定が立てやすい
訪問看護直行直帰の事業所もあり、時間の融通が利く場合がある
介護施設(日勤帯)高齢者ケアの経験がそのまま活きる
保育園・学校勤務時間が読みやすい
内視鏡室・手術室(日勤)専門性を維持しながら日勤

外来については外来看護師への転職、訪問看護については訪問看護へ転職する前に知っておくべきことで詳しく整理しています。

③ 非常勤・パートに切り替える

時間のコントロールを最優先する選択肢です。

ただし、社会保険や扶養に関わる基準が2026年に変わっているため、制度を理解したうえで設計する必要があります。詳しくは扶養内で働く看護師をご覧ください。

④ 単発・スポット勤務

介護の状況が読めない時期に、働く日を自分で決められるという点で選択肢になります。

収入は不安定になりますが、「今月は無理」という月を作れるのは大きな利点です。看護師の派遣・スポット勤務という働き方も参考にしてください。


介護離職は最後の手段に

厚生労働省も繰り返し発信していますが、介護を理由に仕事を辞めることは、基本的におすすめされていません。

理由は明確です。

  • 収入が途絶える(介護には費用がかかる)
  • 社会とのつながりが切れ、介護者が孤立する
  • 介護が終わったあと、同じ条件で復職できるとは限らない
  • 年金や社会保険の面でも不利になる

看護師は資格職なので復職しやすい職種ではあります。ただし、ブランクが長引くほど戻るハードルは上がります。

辞める前に、必ず制度と働き方の変更を検討してください。 順序は「制度を使う → 働き方を変える → それでも無理なら」です。


実務的にやっておくとよいこと

1. 要介護認定の申請を早めに

サービスを使うには認定が必要です。申請から認定までは時間がかかるため、「まだ大丈夫」と思う段階で動くのが正解です。市区町村の窓口または地域包括支援センターへ。

2. 地域包括支援センターを把握しておく

親の住む地域のセンターが、最初の相談窓口になります。遠方に住んでいる場合は特に重要です。

3. 兄弟姉妹と役割を決める

「看護師だから」で全部が集まる構造を、早い段階で崩しておいてください。お金を出す、手続きをする、通う、という役割分担を明確にしておくと後が違います。

4. 費用の見通しを立てる

介護保険の自己負担、施設費用、医療費。おおよその金額を把握しておくと、働き方の判断がしやすくなります。

5. 自分の休息を予定に入れる

これが一番忘れられます。介護は長期戦です。倒れたら誰も助けられません。

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まとめ

  1. 介護休業は通算93日・3回まで分割可能。自分で介護する期間ではなく、体制を作る期間
  2. 介護休暇(年5日/10日)は短時間の用事に使える
  3. 深夜業の制限を請求できる。看護師にとって夜勤の調整は最重要
  4. 2025年から事業主による制度の個別周知・意向確認が義務化されている
  5. 罠その1:「専門職だからできる」と抱え込む。できることとやるべきことは違う
  6. 罠その2:ケアマネジャーの領域は任せる
  7. 罠その3:職場に言わないと制度は使えない
  8. 順序は「制度を使う → 働き方を変える → それでも無理なら」。介護離職は最後の手段
  9. 要介護認定の申請と地域包括支援センターへの相談は早めに
  10. 兄弟姉妹との役割分担を早い段階で決める

介護は、頑張る量ではなく体制の作り方で決まります。そして看護師は、その体制を作る力を持っている人たちです。

その力を、自分自身のために使ってください。


本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。制度の要件・給付内容は改正される場合があり、個別の適用可否は状況により異なります。実際の手続きについては、勤務先の担当部署、ハローワーク、お住まいの市区町村・地域包括支援センターにご確認ください。

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